相続による名義変更登記を行う際に、古い抵当権がついたままの土地が見つかることがあります。
今回は、抵当権者が「無限責任〇〇村負債整理組合」であった場合の手続きをご説明します。
農村負債整理組合とは
昭和初期、農家の負債整理のために、農村負債整理法が定められました。農村で組合を形成し、負債を整理しようと試みたのです。
その後、負債の完済により解散した組合もありますが、現在も休眠状態の組合がいくつか現存していると言われています。
今回の手続きでも、解散せず休眠状態で残っている農村負債整理組合が抵当権者でした。
抹消の手続きの流れ
では、解散していない農村負債整理組合の抵当権抹消は、どのように手続きを進めるべきでしょうか。
①理事の生存調査
基本的には、法人の代表者、すなわち負債整理組合の理事と協力して抹消登記を行う事となります。
まず、負債整理組合の登記簿を確認し、理事が生存しているか否かを調査します。登記簿に理事死亡の旨が記載されているケースもあれば、戸籍等で調査を必要とするケースもございます。
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②仮理事の選任申請
理事が全員死亡している場合は、負債整理組合の代表者として「仮理事」を求めることとなります(農村負債整理組合法第24条が準用する産業組合法第60条の2)。
不動産の所有者が利害関係人となり、都道府県知事に必要な書類を提出して、仮理事の選任を申請します。
県によっては経験がなかったり、依頼を断るところもあるようですが、千葉県では問題なく手続きを行ってもらえました。
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③仮理事選任の法人登記
仮理事が選任されましたら、法務局にて仮理事選任の法人登記を行います。登記申請とともに、代表者としての仮理事の印鑑届も行います。
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④抹消登記
仮理事と協力して、抹消登記を行います。登記済証がないままの申請となりますので、代理人司法書士が仮理事の本人確認情報を作成するか、事前通知制度を利用するか、適宜対応が必要になります。
参考書籍
- 「月報司法書士」2011年4月 №470
- 「休眠担保権に関する登記手続と法律実務」(正影秀明著)
- 「休眠担保権をめぐる登記と実務」(後藤基著)